【#3】トイレ横の自室
私の自室は1階で、トイレの横に位置している。
自分自身は特段頻尿という訳でもないが、寒いとなんとなく行く回数が増えるものだし、自室から風呂へ行くときも夜寝る前も「あ、トイレ行ってからにしよっかな」と思って用を足せるのでシャワしっこ*1やおねしょの危険性が低いといえる。
と、こう書けば利点だらけのように思えるが実は一つ困ったことがある。
私の父の排尿音がそれはそれはデカイのだ。
四方を壁に囲まれ、且つドアは完全に閉まっているのにも関わらず物凄く響く。町内放送どころか緊急地震速報レベルの爆音は当然私の居る自室にも届く。
現に先ほども「子猫がグーパーするだけの動画」を観て脳を液状化させるのに勤しんでいたところ、突然「じょぼばぼばぼばばぼぼぼぼぼぼぼ～～～～～」という爆音で飛び起きてしまった。
それまで愛でていたかわいい子猫は瞬時に脳内からかき消され、ストレスホルモンとして一気に放出されたノルアドレナリンによる眩暈と早まる鼓動に爆音の排尿音が相まって部屋はさながら地獄のクラブハウスのようだ。暗闇だとシャンパンなのか泡立ってるだけの尿なのかわかりゃしない。ション･ペリニヨンかて。やかましわ。
それから数分、否何百億年にも等しい時間が爆音の排尿音と共に流れた。
父がバタンと扉を閉めて出ていく頃には私はやつれきり、両耳には尿を切る雫のﾋﾟｯﾁｮという音すらもしっかりとこびり付いていた。なすすべなく布団に倒れ伏した私は1週間くらい洗ってない枕カバーを見て「衛生的には洗った方がいいんだろうけど、私にはまだ必要性は感じられない。むしろ頻繁に洗うことによって細かな毛玉ができるなどしてそれが雑菌の温床になるということも考えられる。だからまだ洗わないから」と誰に聞かせるともなく呟いた。嘘、ほんのり皮脂の匂いがするかも。やっぱ洗お。
という訳で事態の深刻さはわかっていただけたと思う。
しかし水を流すジャーという音も「ああ、流してんのね」くらいにしか聞こえないのに一体どうして排尿する音だけが爆音なのだろうか。
もしかして便器じゃなくて壁に向けてした上でそれをスピーカーで流してたりする？それか本当はトイレなんかじゃなくてどっかの温泉施設に繋がってたりする？あの永遠に湯が出てくるライオンの口からでる音だったりする？それを私が知らないだけ？？
疑問は尽きない。そして万物の生きとし生ける苦しみも尽きない。
一切行苦。そして私は智慧をもって耳栓をし爆音から厭い離れることにする。
*1:シャワーを浴びながら排尿すること。出典:オモコロチャンネル
